6月 5

英語が話せるようになるかどうかはアイデンティティーで決まる。

アメリカに行くのに、話せるようにならないのはなぜでしょうか?

留学、ワーホリで海外に行って、英語がバリバリ喋れるようになる方はもちろん多いです。

ですが海外に行っても話せるようにならない方も多いです。

それってなぜでしょうか?

理由はたくさんあるかもしれませんが、特に大きな理由の1つを聞けば、きっと驚くと思います。

現地の方々と話さないからではなく、

英語を十分学ばないからでもありません。

原因は、僕自身の話し方にあります。

より詳しく言えば、ボストンに10年以上住んでいたのにボストンの方言が身に付かなかったことにあります。

「アーサーはボストン出身っぽくない」

故郷のボストンはアメリカ全土で訛りがあると有名です。

(音声:発音の違いの音声)

周りの人はほとんど方言で話していたし、祖母は特に訛っています。

でもなぜか、僕はボストンの方言が身に付きませんでした。

僕が考えるその理由を、このストーリーでシェアさせてください。

僕はアメリカ人ですが、実はドイツで生まれました

ボストンへ引っ越したのは8歳の時でした。ドイツ語を学ばなくて英語しか話せなかった僕はボストンが大嫌いでした。

その時まで「僕がアメリカ人」という意識で生活していたのですが、周りのボストンの人々に「ドイツ人」、「ナチス」といじめられ、友達も1人もいませんでした。

涙で溢れながら寝た夜がたくさんありました。

どうしてもヨーロッパに帰りたい、もうボストンなんか嫌だ

ということをいつも考えていました。

その当時、僕の心はアメリカ人ではありませんでした。ボストン出身とも言えないほどでした。しかも、ボストンの人々にもあまり気に入られませんでした。

それがきっかけでボストンの方言を身につけていなかったのです。

「へ、それって関係あるの?」と思っている方がいらっしゃると思います。

類が友のように話す

この事実に関して、J.K Chambers氏の著書である「Sociolinguistic Theory」(社会言語学論)でとても大事な研究が行われました。そこで、彼はとても面白い発見をしたのです。

You talk like people you like / identify with

我々」と認識する人よりも」と認識する同じような話し方をする

We talk like people who are in our 内, and we talk differently from people who are in our 外

つまり、相手が「自分と違う」または「仲良くなりたくない」と思っている場合、我々の言語が変わり、相手の話し方とは違うようになります。

でも相手が「自分と似ている」または「仲良くなりたい」と思っている場合、その人と同じように話せるようになります。

つまり、相手が「自分と違う」または「仲良くなりたくない」と思っている場合、我々の言語が変わり、相手の話し方とは違うようになります。 でも相手が「自分と似ている」または「仲良くなりたい」と思っている場合、その人と同じように話せるようになります。

このようなことは、日本人同士の場合でもたくさんあります。

大阪出身の方々は関東出身の方と話す時、標準語を使うことが多いです。でも相手も大阪出身だとわかったとしたら、どうなるのでしょうか?いきなり大阪弁に切り替えることが多いですよね。思わず、自然に出てくるわけです。

僕の場合も一緒

ボストンに引っ越した僕は「自分が周りの人と違う」と強く思っていました。しかも僕のことを気に入ってくれる人もあまりいませんでした。

ですから僕のスタンダードな、「きれいな」発音を維持してボストンの方言を一切話さなかったんです。

でも大学に行くためにシアトルに引っ越したら「ボストン出身でかっこいい」と思われ始めました。自己紹介したらいつも「アーサー、ボストン出身なのに訛っていないのはなんで?」とよく聞かれました。

それがきっかけで「自分はボストン出身」と思い始め、同時に故郷が恋しくなり、ボストンのことが好きになってきました。

結果として、意識せずにボストンの方言で話すことが増えました。

ボストンに帰って友達と話したら「アーサー、なんで今頃訛ってんの?」と聞かれたほどです。

自分の「内」であると同じように話し

自分の「外」であると違うように話

でも母語のことだけに限りません。

第2言語にも当てはまります。

訛った発音の原因は「練習不足」じゃない

数年に渡って海外に住んでも英語があまり上達する人と上達しない人の違いは何でしょうか?

それに関する研究がだんだん行われてきています。

Bonny Norton氏は「Identity and Language」という著作で興味深い発見をしました。

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カナダ在住のロシア人の移民を研究しました。だいたい同じ期間でカナダに滞在したにもかかわらず、訛っている英語で話している人がいて、訛っていない英語を話した(ネイティブの発音を取得した)人もいました。

その理由はとても興味深いものです。

実は、母語ではなく、英語を家で話したり、カナダ人の友達を作ったり、現地で開催される母国のイベントにあまり参加しなかった人は訛りのない英語で話せるようになりました。

一方、母語を家で使ったり、同じ出身の友達がいたり母国のイベント参加したりした人は訛っ英語、または不自然な英語で話していました。

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一見当然なことのように思えるかもしれません。

「だってカナダ人の友達がいたし、英語を使う機会がたくさんあったんじゃない?」

と考えるかもしれません。

それが原因の1つに間違いないとは思うのですが、その背景にも大事なことがありました。

家で母語を使わなかったのはなぜでしょうか?

同じ出身の友達を作らなかったのはなぜでしょうか?

母国のイベントに行かなかったのはなぜでしょうか?

もしかしたら、自分が「カナダ人と同じ」だと意識していたのではないでしょうか。

もう「自分がカナダ人」だということを。

自分がカナダ人とは違う」ということを意識したグループは英語をあまり話せるようにはならなかったでしょう。

海外に行っても英語を話せるようにならない日本人はきっと、コレが原因です。

日本の方にも同じようなことが起きる

僕自身も自分の経験でこのようなことを見たことがあります。

Bonny Norton氏の研究を初めて読んだ「第二言語取得」という授業では、「Nori」という日本人の大学生がいました。

15歳の時に東京からシアトルに引っ越したのですが、誰もが見た目で日本人だとわからなかったのです。格好がアメリカ人らしくアメリカ人の友達もたくさんいて、いつもパーティーをしていたそうです。

初対面の時も、僕は彼が日本人だと思いませんでした。発音も100%自然でした。

Nori: “No man, I’m originally from Japan”

   ううん、もともと日本出身です。

Arthur: “Oh really? So do you join the Japanese student stuff at school?”

     、ほんとに?じゃあ、日本文化サークルにも参加したりしてるの

Nori: “No, not really. I don’t know many Japanese people here.”

    ううん。実は、日本人の知り合いがあまりいなくて・・・

そこで、話題が僕の日本語学の話、日本の文化に対する憧れに変わりました。

Noriは笑顔になって、とても嬉しそうでした。アメリカに引っ越してから、彼が「日本人」ということに興味を持った人はとても少なかったのです。

それで僕らは仲良くなりました。

次回の授業でまた会った時に、

Noriの話し方が変わりました

ほんのちょっと日本語訛りで喋っていたのです。英語を間違えたこともありました。

それってなぜでしょうか?

正確に「こうだから」とは言えません。

でもきっと、僕が彼の「日本出身」ということを尊重したからなのではないかと思います。それがきっかけで、彼が自分の「日本人らしさ」を表に出してくれました。

秘訣はきっと「もっと学ばなきゃ!」ということではない

英語力は自分の意識次第と思えるのではないでしょうか?

それがきっと、英語が喋れる、喋れない日本人が決まることでしょう。

英語を十分学ばないからではなく、

自分が日本人、外国人と違う」という意識が強いからかもしれません。

外国語より「外国人」という単語をよく使い、相手と距離感を持つからかもしれません。

英語力を伸ばすカギは「自分も外国人の相手と同じなんだ」という意識かもしれません。

「自分が日本人」という意識を捨てる必要は一切ありません。

逆に、自分の文化、経験などを相手とシェアすると会話が盛り上がるはずです。

でもその表面的な違いにもかかわらず、心が一緒ということを意識すれば、相手との距離感が縮まります。相手と仲良くなりやすくなります。

知らずに相手と同じように自然に話せるようになります。

だって、外国人と日本人と誰でも同じ「人間」なのですから。


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  1. はい、ありますよ。15か国くらいかな・・アメリカやカナダ、オーストラリア、フランス、香港、韓国、バングラデシュ、あとは南米や南太平洋の島国とかです。

     今、日本で住んでいる外国人の方の日本語の勉強を手伝うボランティアもしていて、コミュニケーションや多文化共生という点にすごく興味があります。

    1. ごめんなさーい!Arthurのコメントに返信したつもりだったのに・・・新しいコメントになってしまいました。

  2. Thank you for sharing your story.
    This makes sense to me!
    Your way to teach english is really great! 🙂

  3. It’s a very interesting story.I’d say it’s related Japanese sence of “内と外”.
    As you say,「日本人も外国人も同じ人間」,we should find 共通項 among international people to have great time.

    面白いお話をありがとう。日本人の「内と外」という感覚にも関連してるかとも思いました。
    「日本人も外国人も同じ人間」であり、相手(外国人)との共通項をみつけ、楽しく話したり過ごせたらいいですね。

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