10月 31

ドナルド・トランプをからかうとき、アメリカ人はこう言います。

普段、僕は政治の話はしないのですが・・・

今回は、ある面白い話をシェアしたいと思います。

いま世界中で話題の、アメリカ大統領候補トランプ氏をご存知ですか?アメリカや日本のニュースでは、彼をよく「Trump」と呼びます。

しかし、様々な記事の見出しや本文、ブログ、日常の会話ではよく、「Trump」以外のちょっと変な面白いあだ名で呼ばれているのです。

どんなあだ名かご存知ですか?

実はこのあだ名、トランプ氏を好ましく思っていない人たちが、彼の攻撃的で上から目線な性格をネタにして、冷やかすためによく使っています。

アメリカのニュースを見たことがある方は、このあだ名をどこかで目にしたことがあるかもしれません。でも恐らくどんなあだ名かには気づいていないと思います。

その特別なあだ名とは?

「The Donald」です。

このあだ名、実際いろいろなところで使われています。

以下、記事の見出しに使われている例をほんの一部ご紹介します。

Defeat Looms for The Donald

Sympathy for The Donald

The Day of The Donald

一見、このあだ名はとてもおかしく見えます。英語では、名前の前に「the」をつけることは文法的に間違っているからです。もし誰かが「the Arthur」とか「the Mika」と言ったら、アメリカ人にはとてもおかしく聞こえます。

でもこのトランプ氏のように「特別な場合」だけは、みんな名前の前に「the」をつけて呼びます。

一体なぜでしょうか?

その理由を、今回のコラムでご紹介します。

※今回のコラムはこちらの記事を参考にしています。記事は英語でしかも長いですが、興味のある方は是非ご覧ください。

「The Donald」の誕生

このおかしなあだ名、そもそもなぜ使われるようになったのでしょうか?

トランプ氏は、数々の美女と結婚していることで有名です。彼の最初の妻であるイバーナ・トランプはチェコ出身のモデルで、当時あまり英語が話せませんでした。そしてあるインタビューで、彼女は夫を間違えて「The Donald」と呼びました。

そこから「the Donald」というあだ名が広まりました。奥さんの英語が間違っていたから有名になったわけではありません。アメリカ人はイバーナ・トランプの英語の間違いを冷やかしたりはしません。(ネイティブは英語が間違っていても気にしない)

ではなぜこのあだ名は有名になったのでしょうか?間違えているとわかっているのに、アメリカ人はなぜこのあだ名を使うのでしょうか?その理由は、「The」の持っているイメージ・感覚、いわば「コトバの本質」が根底にあります。言葉に単に「The」を付けただけで、その言葉の印象はだいぶ変わり、アメリカ人にとってはそれが時には冗談のネタになったりするのです。

では、言葉に「The」を付けることで、印象はどのくらい変わるものなのでしょうか?

トランプ氏のあだ名「the Donald」を例に、詳しく見てみましょう。

「知っている」ことには、「the」を使う

Which Donald? Oh come on. You know. Not Sutherland. Not Rumsfeld. Not Duck. The Donald.

え?どのドナルドだって?知ってるくせに。サザーランドでもなく、ランスフェルドでもなく、ダックでもなく、「あのドナルド」だよ!

「The」は相手と共有している情報を示す言葉です。「The (もの)」と言われたら、ネイティブは無意識に「あっ、僕(と相手)が知っているもののことだ」と感じます。

たとえば、

僕が「I want to go to the restaurant」と言ったら、

相手は僕がどこのレストランのことを話しているかわかっています。

日本語だと「あのレストランに行きたい」というニュアンスに近いと思います。

逆に僕が「I want to go to a restaurant」と言ったら、相手は具体的なレストランがイメージできないはずです。

つまり、アメリカ人が「The Donald」と言う場合、「あぁ、一般的なドナルドじゃなくて、『あのドナルド』ね!」という意味を含んでいます。そしてトランプ氏がいつものように馬鹿げていて面白い話しをすることに期待するのです。

Oh look. It’s the Donald. I wonder what he will say this time…

あっ、「ザ・ドナルド」だ。今回はどんなこと言っちゃうのかなー

もし「the」をつけずに「Donald」と言うと、特徴がないので相手は「世界中にいるドナルドのうち誰のことを言ってるの?」と思うかもしれません。また、「Trump」だけだと、「どのトランプさん?トランプ夫人?お子さん?それとも前妻?」と思います。ですから、ドナルド・トランプ氏のことを話す場合は、「The Donald」と呼ぶのが一番わかりやすいです。

実際、ドナルド・トランプ氏とイバーナ・トランプ夫人の離婚が話題になった時には、こんな見出しの記事が出ました。

イバーナ夫人とドナルド氏は二人とも名字が「トランプ」なので、区別するためにこの記事では「The Donald」が使われています。

でもこの記事、ただ二人を区別するためだけに「the Donald」を使ったわけではなく、「みんなに嫌われている『あのドナルド』」という意味でも使っています。

実は、トランプ氏を「the Donald」と呼ぶ時には、もう1つ別の「the」に伴う気持ちが存在します。「The Donald」というあだ名はすごく面白いんです。

「特別」か「世界一」のものには「The」を付ける

“Why is “The Donald” funny? Kurtz offered that “I guess it’s funny because it’s like a royal title for a guy who’s not a senator or a governor or part of the political establishment.” (Well, not yet. . .)”

なんで「ザ・ドナルド」という呼び方って面白いんですかね?「私が思うに、議員や知事や政界人でもない(まぁ、まだなってないので…)普通の男を、王族の人みたいに呼ぶところじゃないですかね」とカーツ氏は言います

アメリカ人は友達同士で何かについて話すとき、その何かの持つ凄さを強調するためによく「the」を付けて表現します。なので、「唯一無二!比べるもの無し!」と表現したい時には、「the best」と言います。

たとえば、とても美味しいパンケーキを食べながら、あなたはこう言います。

This isn’t just a pancake. It is THE pancake.

つまり、このパンケーキは世界一美味しくて、あなたにとって理想的なパンケーキだと言うことです。

この言い方はちょっと大げさですが、こんな風に少し冗談めかして使うこともできます。

他にも、とても優しくてかっこいい、尊敬する人のことを表現するときに「the」を付けて、「The Man」と呼んだりします。僕がよく行く「Freeman Cafe」には、とても優しい店員さんがいます。楽しく会話をしてくれたり、いつもすごくお世話になっているので、僕は彼を「the man」と呼びます。

すると、彼は冗談で「I’m the man」と言います。僕らは友達なので、軽い感じでこんなジョークを言い合ったりします。

では、なぜアメリカ人はこの特別な感覚を持つ「the」を、ドナルド・トランプ氏のあだ名に使うのでしょうか?彼は不動産王として有名ですが、偉そうな言動と無神経で思いやりのない発言で悪名高い人物です。なぜそんな人物に「the」をつける必要があるのでしょうか?

トランプ氏は「自分は最高」だとよく言います。もちろん周りは全くそう思っていません。しかし、彼がしつこいくらい自画自賛しているイタい姿を見て、周りはもはや彼を何かのジョークだと感じるようになりました。だから彼を「the Donald」と呼んで彼の冗談にのっているのです。

トランプ:俺って最高!

聴衆:はいはい、その通りだよ「ザ・ドナルド」さん

もちろん、誰も本気でそんなことは思っていません。でも、こうやって彼を泳がせること自体が面白すぎるジョークなのです。多くのアメリカ人は「あなたは全然最高じゃないけど、見てる分にはすごくウケるから、そのバカな発言もっとして~」と思いながら「the Donald」と呼んでドナルド氏を冷やかしています。

「The」の感覚

このコラムで僕が伝えたかったのは、「The Donald」という面白いあだ名のことだけではありません。

トランプ氏のあだ名を通して、「The」が持つ2つのニュアンスを伝えたかったのです。多くの日本人から「『a』と『the』の使いわけを知りたい」と言われますが、言葉の表面的な意味やルールではなく、「The」という言葉が本来持つイメージや感覚から、言葉の本質を知って頂きたいと思い、このコラムを書きました。

でも正直、僕もびっくりしたのが、日本人がいつも間違えていて、どうやっても使いこなせない「the」という単語を、あのトランプ氏のおかげでこんなに分かりやすく説明できるとは!!

勉強になりましたか?

今度、「相手がきっと知っていること」や「あなたが最高だと思う何か」について誰かと話す時、是非「the」を使ってみてください。

それか、トランプ氏を「The Donald」と呼んで冷やかしてみてください。

あなたに聞きたいことがあります

僕は今回のコラムを、冒頭でご紹介した英語の記事を参考に書きました。あなたは日ごろ、何か英語のニュースやWebを見たりしていますか?そのWebサイトの名前は?

以下のコメント欄でぜひシェアして下さい!

アーサーより


Tags

the, アメリカ, トランプ


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